曾谷殿御返事 別名:成仏用心抄

大意

境智の二法の妙法を地涌の菩薩が弘通と明かす

 健治二年(1277年)八月三日、日蓮大聖人が五十五歳の時、身延で著され、曾谷教信に与えられた御消息が「曾谷殿御返事」(1055頁)です。別名を「成仏用心抄」といいます。
 仏に成るための道は、境智(きょうち)の二法の一如を説いた法華経にあり、法華以前の爾前権教は境と智が格別であるから成仏できないことを示しています。そして、「此の境智の二法は何物ぞ但南無妙法蓮華経の五字なり、この五字を地涌の大士を召し出して結要付嘱せしめ給う」と、今、大聖人がその要法を弘通されていることを明かされています。(中略)

 たとえ、正師であっても謗法を呵責しないときは、師も檀那も共に無間地獄に堕ちることを明かし、「謗法を責めずして成仏を願はば火の中に水を求め水の中に火を尋ぬるが如くなるべしはかなし・はかなし、何に法華経を信じ給うとも謗法あらば必ず地獄にをつべし」といましめています。また、法華経は種、仏は植え手、衆生は田であることを示し、末法衆生はどこまでも正法である法華経(南無妙法蓮華経)と主・師・親の三徳を具えた仏・正師に依って成仏すべきことを勧めて、「若し此等の義をたがへさせ給はば日蓮も後生は助け申すまじく候」と述べられています。

日蓮大聖人の「御書」をよむ下 より